指定薬物
みなさん指定薬物ってご存知ですか?私は昨日知りました。
以下は知らない人は読まないほうが良いです。
わたし、とあるところで化学物質の管理を担当しているのですが、連休なか日の昨日、久しぶりに出社したら、上司よりいくつかの化学物質について廃棄するようにメールが届いていました。
30種ほどあったのですが、その組み合わせがあまりに不可解なので、調べてみたところ、4月1日(2007年)改正薬事法で指定された”指定薬物”なるものでした。
あまり詳しく書くと、アダルトブログというか、犯罪チックになるので他所にゆだねるとして、”指定薬物”とは、簡単に言うと向精神的な作用があり、これまで脱法ドラッグとして流通していたものだけれども、それを取り締まる為に設けたカテゴリー。のようです。
なるほど、そういわれると、30種のリストの中には向精神的な作用のありそうなものもあるけど、この亜硝酸エステル系の試薬は何に使うのだろう?とおもって再度検索したところ、な、なんと
亜硝酸エステルを吸引している人がいるってかぁ?
それは、化学をかじったことのある人間として信じられなれないことでした。
化学物質の分類法にはいろいろありますが、その一つとして、室温で反応性の高い試薬か、それとも低い試薬か?という単純な分類をしたとすると、亜硝酸エステル類は反応性のとても高い物質に分類されると思います。
鼻から吸ったりした日には、もうそりゃあちこちの細胞と化学反応しちゃうんじゃないかと思います。きっと近い内に鼻なり喉なりが癌になっちゃうんじゃないかと思います。
摂取するとドキドキするそうですが、そりゃそうでしょう。きっとそれは向精神的な作用じゃなくて、心臓とか血管とかに負担をかけてるだけです。
アルコールを飲んで、100メートルダッシュするのと大差ないと思います。そっちのほうがキくと思いますよ。
他の指定薬物についてはどうかわかりませんが、亜硝酸エステルを摂取しているかたは、すぐにやめたほうが良いでしょう。きっと精神・肉体依存性とかもないです。
身の回りに有機化学に詳しい方がいらっしゃったら相談されるのも良いと思います。絶対に、”道徳とかそういう問題じゃなくて、とりあえずやめとけ”そういわれると思います。
以前BPZが麻薬に指定されたときにも、全国の有機化学者は大きく、深いため息をついて、こんなの効くわけねぇだろ。と思いました。今回はそれ以上の衝撃です。
focuslightsは、日本の有機合成化学に携わる全ての人々を代表して、”とりあえず亜硝酸エステルの摂取はやめとけ”と、心からお願いしたいです。
2011/06/10 追記
いろいろコメントをいただいているようなので補足します。
ヘモグロビンと結合するといっても、それは、シアン中毒の際の解毒剤としての利用です。
シアンより安全というだけで、亜硝酸エステルが安全なわけではありません。
Wikipedia 亜硝酸アミル
亜硝酸アミルがヘモグロビンと結びついてメトヘモグロビンとなり、さらにシアンがメトヘモグロビンと結合しシアンメトヘモグロビンとなり無毒化される。
なお、亜硝酸イソブチルはAMES試験(変異原性試験)陽性です。
Mirvish SS, Williamson J, Babcook D, Chen S-C. Mutagenicity of Iso-butyl nitrite vapor in the Ames test and some relevant chemical properties, including the reaction of iso-butyl nitrite with phosphate. Environ Mol Mutagen 21:247-252 (1993).
Abstruct
また、亜硝酸イソペンチルは、哺乳類染色体異常試験、AMES試験で陽性です(PDF)
細胞遺伝学的解析:陽性 ハムスター
微生物試験:陽性 Salmonella typhimurium
姉妹染色分体交換試験:陽性 ハムスター
体細胞突然変異試験:陽性
さらに、ホモセクシャルが亜硝酸アミルを吸入した際の毒性研究が多数行われており、HIV感染時のカポジ肉腫発生を促進するそうです。
Jorgensen KA, Lawesson S-O. Amyl nitrite and Kaposi's sarcoma in homosexual men. N Engl J Med 307:893-894 (1982).
Goedert JJ, Neuland CY, Wallen WC, Greene MH, Mann DL, Murray C, Strong DM, Fraumeni JF Jr, Blattner WA. Amyl nitrite may alter T lymphocytes in homosexual men. Lancet i:412-415 (1982).
Haverkos HW, Pinsky PF, Drotman DP, Bregman D. Disease manifestation among homosexual men with acquired immunodeficiency syndrome: a possible role of nitrites in Kaposi's sarcoma. Sex Trans Dis 12:203(1985).
Dax EM, Adler WH, Nagel JE, Lange WR, Jaffe JH. Amyl nitrite alters human in vitro immune function. Immunopharmacol Immunotoxicol 13:577-587 (1991).
最後に、有機有機化学者なら、ジアゾ化反応をご存知かとおもいますが・・・
>脂溶性を利用して、アミンを有機溶媒系でジアゾ化するために用いられる。
>R-NH2 + iso-C5H11ONO → R-N2+
どうみても、健康によい化合物には見えないなぁとfocuslightsは思います(笑
以下は知らない人は読まないほうが良いです。
わたし、とあるところで化学物質の管理を担当しているのですが、連休なか日の昨日、久しぶりに出社したら、上司よりいくつかの化学物質について廃棄するようにメールが届いていました。
30種ほどあったのですが、その組み合わせがあまりに不可解なので、調べてみたところ、4月1日(2007年)改正薬事法で指定された”指定薬物”なるものでした。
あまり詳しく書くと、アダルトブログというか、犯罪チックになるので他所にゆだねるとして、”指定薬物”とは、簡単に言うと向精神的な作用があり、これまで脱法ドラッグとして流通していたものだけれども、それを取り締まる為に設けたカテゴリー。のようです。
なるほど、そういわれると、30種のリストの中には向精神的な作用のありそうなものもあるけど、この亜硝酸エステル系の試薬は何に使うのだろう?とおもって再度検索したところ、な、なんと
亜硝酸エステルを吸引している人がいるってかぁ?
それは、化学をかじったことのある人間として信じられなれないことでした。
化学物質の分類法にはいろいろありますが、その一つとして、室温で反応性の高い試薬か、それとも低い試薬か?という単純な分類をしたとすると、亜硝酸エステル類は反応性のとても高い物質に分類されると思います。
鼻から吸ったりした日には、もうそりゃあちこちの細胞と化学反応しちゃうんじゃないかと思います。きっと近い内に鼻なり喉なりが癌になっちゃうんじゃないかと思います。
摂取するとドキドキするそうですが、そりゃそうでしょう。きっとそれは向精神的な作用じゃなくて、心臓とか血管とかに負担をかけてるだけです。
アルコールを飲んで、100メートルダッシュするのと大差ないと思います。そっちのほうがキくと思いますよ。
他の指定薬物についてはどうかわかりませんが、亜硝酸エステルを摂取しているかたは、すぐにやめたほうが良いでしょう。きっと精神・肉体依存性とかもないです。
身の回りに有機化学に詳しい方がいらっしゃったら相談されるのも良いと思います。絶対に、”道徳とかそういう問題じゃなくて、とりあえずやめとけ”そういわれると思います。
以前BPZが麻薬に指定されたときにも、全国の有機化学者は大きく、深いため息をついて、こんなの効くわけねぇだろ。と思いました。今回はそれ以上の衝撃です。
focuslightsは、日本の有機合成化学に携わる全ての人々を代表して、”とりあえず亜硝酸エステルの摂取はやめとけ”と、心からお願いしたいです。
2011/06/10 追記
いろいろコメントをいただいているようなので補足します。
ヘモグロビンと結合するといっても、それは、シアン中毒の際の解毒剤としての利用です。
シアンより安全というだけで、亜硝酸エステルが安全なわけではありません。
Wikipedia 亜硝酸アミル
亜硝酸アミルがヘモグロビンと結びついてメトヘモグロビンとなり、さらにシアンがメトヘモグロビンと結合しシアンメトヘモグロビンとなり無毒化される。
なお、亜硝酸イソブチルはAMES試験(変異原性試験)陽性です。
Mirvish SS, Williamson J, Babcook D, Chen S-C. Mutagenicity of Iso-butyl nitrite vapor in the Ames test and some relevant chemical properties, including the reaction of iso-butyl nitrite with phosphate. Environ Mol Mutagen 21:247-252 (1993).
Abstruct
また、亜硝酸イソペンチルは、哺乳類染色体異常試験、AMES試験で陽性です(PDF)
細胞遺伝学的解析:陽性 ハムスター
微生物試験:陽性 Salmonella typhimurium
姉妹染色分体交換試験:陽性 ハムスター
体細胞突然変異試験:陽性
さらに、ホモセクシャルが亜硝酸アミルを吸入した際の毒性研究が多数行われており、HIV感染時のカポジ肉腫発生を促進するそうです。
Jorgensen KA, Lawesson S-O. Amyl nitrite and Kaposi's sarcoma in homosexual men. N Engl J Med 307:893-894 (1982).
Goedert JJ, Neuland CY, Wallen WC, Greene MH, Mann DL, Murray C, Strong DM, Fraumeni JF Jr, Blattner WA. Amyl nitrite may alter T lymphocytes in homosexual men. Lancet i:412-415 (1982).
Haverkos HW, Pinsky PF, Drotman DP, Bregman D. Disease manifestation among homosexual men with acquired immunodeficiency syndrome: a possible role of nitrites in Kaposi's sarcoma. Sex Trans Dis 12:203(1985).
Dax EM, Adler WH, Nagel JE, Lange WR, Jaffe JH. Amyl nitrite alters human in vitro immune function. Immunopharmacol Immunotoxicol 13:577-587 (1991).
最後に、有機有機化学者なら、ジアゾ化反応をご存知かとおもいますが・・・
>脂溶性を利用して、アミンを有機溶媒系でジアゾ化するために用いられる。
>R-NH2 + iso-C5H11ONO → R-N2+
どうみても、健康によい化合物には見えないなぁとfocuslightsは思います(笑